食と健康のお話
売上急増するカット野菜の功罪・・・利便性に隠された問題点

 スーパーの野菜売り場ではカット野菜のスペースが広がっています。4月4日付けの農業新聞の1面では、「カット野菜市場右肩上がり」という見出しで、カット野菜市場が成長を続け、市場規模は800億円ともいわれると伝えていました。

 大手スーパーの野菜売り場のカット野菜コーナーでは、ハーブをトッピングした生食用サラダ野菜パックから、季節の鍋物用野菜、20品目以上の野菜を詰めあわせたパック、ラーメン用野菜などのメニュー限定パックまであり、大きさも個食用から、2〜3人用など家族サイズ、パーティーサイズまで品揃えされています。

 同記事のなかで、20種類以上のカット野菜を販売する大手スーパー、イトーヨーカ堂の青果担当者は、小さな子どもを持つ主婦や高齢者の購入が増えており、「カット野菜への抵抗感がなくなり、必要な量だけ買いたいという志向も背景にある」こと、そして「具体的な料理提案できる商材」とコメントしています。
 同紙によると、西友やダイエー、マルエツなど多くのスーパーのPB(プライベートブランド)商材をつくる野菜仲卸業のベジテックでは約700種類のカット野菜製品をつくり、毎年20%の成長で年間40億円強の売上。またカット野菜トップメーカーのサラダクラブ(キューピーと三菱商事が1999年に共同出資で設立)は5年目で46億円の売上にまで成長しているそうです。

 青果物カット事業協議会(全国20事業者加盟)が行ったカット野菜製造の実態調査によれば、1999年のカット野菜の販売額は約500億円だそうですので、4年間で約1.6倍に急成長したことになります。また、カット野菜の販売(需要)先は、同調査では、小売業(30.6%)、外食産業(29.4%)、惣菜産業(21.9%)、その他(企業・学校・病院給食他 18.1%)だったそうです。

洗う、皮をむく、切るなどの手間が省け、メニューに必要な野菜を欲しい量だけ買えるという利便性から、今後もカット野菜の需要は増え続けると見られています。また、料理が面倒だからと野菜を敬遠していた若い人たちが、調理が簡単になることで野菜をたくさん食べるようになることも期待できるという声もあります。しかし、カット野菜にはいくつかの大きな問題点があります。

 例えば、普通の野菜や果物は、カットしてしばらくすると切り口の色が変わったり、菜汁や果汁が出てきます。しかし、カット野菜やカット果物は製造日から消費期限まで3日間ぐらいあり、変色したり汁が出ていることはありません。カット野菜は、殺菌及び変色を防止のために、一般的に次亜塩素酸ナトリウムが使われます。次亜塩素酸ナトリウムは飲料水やプールの水、食品加工機器、浴場水などの消毒、漂白などに使われる薬品です。使用後、洗浄にによって除去されるということで、添加物としての表示はありません。最近では塩素臭が残ることから、高濃度オゾン水、電解強酸性イオン水などで洗浄する設備も出てきています。
 カット野菜や果物には、この次亜塩素酸ナトリウムが残留する可能性があるのです。

 また、カットして洗浄するために、野菜・果物からビタミンやミネラルなどの栄養成分が流れ出ています。
 さらにカット面が長時間、直接空気に触れているために酸化し、成分が変質していることも考えられます。パックされ、スーパーなどの売り場の棚に置かれている間も栄養素の流失と酸化は進んでいます。つまり、カット野菜・果物はおいしさや栄養素が流れ出てしまったスカスカの野菜・果物といえるのではないでしょうか。

 栄養素を逃さず、おいしく食べるには、手間を嫌がらずに、野菜を丸ごと購入して料理することが大切です。例えば大根やにんじんはふだん食べている根よりも葉に、キャベツや白菜は白くて柔らかい内側の葉よりも、青くて硬い外側の葉や芯にビタミンCが多く含まれています。
カット野菜ではこうした大根やにんじんの葉、キャベツや白菜の外葉や芯をはじめ、さまざまな野菜のまだまだ食べられる栄養価の高い部分が捨てられています。野菜の最も栄養価の高いところを捨ててしまってはもったいと思いませんか。
 食品リサイクル法によって工場では残さ(生ゴミ)をリサイクルしているとは思いますが、ゴミとしないで、食べられるところをきちんと食べることが本来の趣旨です。包装用のビニール袋やプラスチック容器の大量使用・廃棄もあり、カット野菜は環境にやさしい食品とは言えません。
(※にんじんの葉はかき揚げ、大根の葉はみそ汁の具や炒めもの、キャベツや白菜の外葉や芯は細かく切って温野菜などにすれば、栄養素を逃すことなくおいしく食べられます)

 高齢で包丁を使うのが大変な方はともあれ、手間が省けて便利だから、子どもが包丁を持つと危ないからと、家庭で常時カット野菜を決められたレシピ通りに使うようになると、ますます子どもたちが料理から離れていき、家庭の味・手作りの味はなくなります。また、都会の子どもたちは野菜の実物に触れる機会が減少していきます。
 1999年に東京ガス都市生活研究所が行った手作り料理に関する意識調査(首都圏在住20〜50代女性)では、市販のカット野菜を使ったサラダを「手作り」と考えている人が全体のおよそ半数に上ったということです。カット野菜を使って、ただ味付けしただけで手作り料理というのも、ちょっとおかしい感じです。

 一つの野菜をどのようにして料理の素材として使うか、切り方や刻み方を料理に合わせて工夫することよってその野菜のおいしさや栄養成分を引き出すことができ、自分流の料理を作ることができるのではないでしょうか。その工夫こそが食育であり、食文化を育むのではないかと思います。
 ふだん食育や家庭での料理の大切さ、野菜を余さず食べることの大切さを訴えている農業新聞ですが、このカット野菜の記事ではそういう視点が全くありませんでした。JAの大口顧客に対して遠慮しているのでしょうか。


 農家と直接取引をし、PB(プライベートブランド)をつくって、安心・安全をセールスポイントにするスーパーですが、やはり売れ筋商品中心主義です。消費者の健康や生産する農家の努力や思いのために、野菜を無駄なく、栄養成分を逃さずおいしく食べることの意味を伝えられるのは、消費者とのコミュニケーション大切にする専門小売店ではないでしょうか。
※参考までに、『野菜がクスリになる50の食べ方』(池田弘志編著 小学館)『自然治癒力を高める連続講座2 自然治癒力・免疫力を高める食生活』(ほんの木)には、体によい野菜のさまざまな知識・効能が掲載されています。